ものづくり白書から見えるもの
2021.07.16
ITコンサルティング
御堂筋の高原です。
本日は「2021年版ものづくり白書」の内容をテーマにしたいと思います。
「2021年版ものづくり白書」では、ニューノーマル時代に製造業が生き残りを懸けて
経営戦略を構築・実施するにあたって、「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」
の3点を重要なポイントと位置付けています。
「レジリエンス」とは、将来発生し得る危機事象や環境変化に柔軟に対応することを指します。
2020年に発生した世界的なパンデミック(新型コロナ)は、多くの国や地域で、ヒトやモノの
移動制限が実施されたため、世界全体のサプライチェーンに影響を及ぼしました。
製造業において新型コロナに起因して支障を来(きた)した業務内容は、生産活動、調達、
物流・配送などの供給側まで影響が出ており、サプライチェーン全体に影響が及んでいます。
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サプライチェーン全体のレジリエンスを強化していくためには、自社の1次サプライヤー
だけでなく、2次サプライヤー以降も含めたサプライチェーン全体を把握する必要があります。
しかし、実際には「調達先が多すぎる」「調達構造が複雑」といった理由で、
サプライヤ全体を把握することは難しくなっています。
これらの課題への対応としては「デジタル技術の活用」が解決策となると考えられます。
1次だけでなく2次以降のサプライヤーもシステム上で管理することで、スムーズな
情報共有ができ、リカバリ策を素早く打つことができます。
2点目は「カーボンニュートラル」です。
日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年
カーボンニュートラル」に挑戦し、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。
サプライヤーを含めたサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現を目指したり、
自社のサプライヤーに対して、原材料の調達から廃棄・リサイクルに至る製品の
ライフサイクル全体でのCO2排出量を算出するように要請する動きもあります。
そして3点目は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
営業・マーケティングといった上流工程や、販売・アフターサービスなどの下流工程
も含めた「バリューチェーン全体におけるDXの在り方」を整理することが必要です。
営業・マーケティング領域では、特定の顧客を対象とした商談情報を管理する営業支援
システム(SFA: Sales Force Automation)と、その手前段階の市場の顧客層を対象とした
ニーズ・課題を想起させる顧客育成情報を管理するマーケティング自動化システム
(MA: Marketing Automation)があります。
それらで扱う情報を個別に独立管理するのではなく、一貫した顧客情報を統合管理する
顧客情報管理システム(CRM:Customer Relationship Management)が必要となります。
![](https://i2.wp.com/sbg.management-facilitation.com/wp-content/uploads/2021/07/image-1.png?resize=613%2C356&ssl=1)
設計領域や製造領域においては、部品点数が多く各業務領域間におけるデータ連携が
難しくなる要因となっていました。
しかし、データ連携が進むことで、開発の初期段階に資源を集中的に投入する
「フロントローディング」手法を取り入れる動きが見られています。試作・評価の負担や
手戻りを減らすことができ、より効率的なものづくりを実現可能となります。
モデルやデータを提供する仕組みとしては、サプライヤーからメーカーへの流れだけ
でなく、メーカーからサプライヤーに対する流れも生まれています。サプライヤーが
設計の意味をより深く理解し、一層効率的な開発を可能にする効果が見込まれます。
企業間で双方向のデータ連携が促進され、よりフロントローディングな開発・設計・評価が
実現することで、新製品をスピーディかつ効率的に市場投入できるようになります。
製造業においてDXを進める際には、注力すべき領域や想定される課題はさまざま存在します。
そのため、自社や取引先がバリューチェーン上で担っている役割や、業務領域間で
必要となるデータ連携が何か、などを的確に把握する必要があります。
また、経営資源が限られる中で、進めていくためには、自社だけではなくサプライチェーン
全体での実現を目指す動きも必要となります。
2021年版ものづくり白書で述べられている3つの観点「レジリエンス」「グリーン」
「デジタル」は、今後必ず取り組みが必要となってくるものです。
皆さんもこの3つを理解し、少しずつでも自社での取り組みを始めていきましょう。