社員旅行に複数プラン設定した場合の税務上の検討事項
2020.11.02
税務
こんばんは、御堂筋税理士法人の高岡でござます。
今回は、社員旅行に複数プラン設定した場合の
税務上の検討事項についてお話させていただきます。
みなさん昨今の状況のなか、社員旅行はどうされているでしょうか?
大人数での会食や集会等が自粛されるなか
GO TOトラベル事業により、旅行の促進がされ
すでに個人的には利用された方もいらっしゃることと思います。
そんな中、社員のみなさんのニーズに応える形で
社員旅行のプランを複数ご検討されているお会社も
あるのではないでしょうか?
ご本人のご意向や、ご家族の状況も考慮して
A:国内 1泊2日旅行
B:国内 日帰り旅行
C:近隣での夕食
の3パターンを社員旅行として企画した場合
どのような課税上の問題が生じるのでしょうか?
基本的には、社員に対して毎月の給与以外に
利益供与した場合には、現物給与として所得税が課されます。
ただし、従業員レクリエーション旅行や研修旅行を行った場合
使用者(会社)が負担した費用が少額である場合は課税しないこととする
という少額不追及の趣旨から、所得税法基本通達36-30において
一定の目安が提示されております。
(課税しない経済的利益……使用者が負担するレクリエーションの費用)
36-30 使用者が役員又は使用人のレクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担することにより、これらの行事に参加した役員又は使用人が受ける経済的利益については、使用者が、当該行事に参加しなかった役員又は使用人(使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者を除く。)に対しその参加に代えて金銭を支給する場合又は役員だけを対象として当該行事の費用を負担する場合を除き、課税しなくて差し支えない。(注)上記の行事に参加しなかった者(使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者を含む。)に支給する金銭については、給与等として課税することに留意する。
また、運用については国税庁長官よりの通達にて
「当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して実態に即した処理を行うこととするが、次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて差し支えないものとする。
(1) 当該旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数による。)以内のものであること。
(2) 当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合には、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること。」
このように一定の目安として①4泊5日以内であるか②50%以上参加しているか
という要件が記載されています。
では、今回のように3パターン用意した社員旅行については
②の要件についてどう取り扱ったらよいでしょうか?
例えば、社員45名の会社で
A:13名 B:8名 C:7名 不参加:17名
となった場合、会社はこの社員旅行費について
現物給与として所得税の課税をしなくてはならないのでしょうか?
▼国税不服審判所 平成22年12月17日判決
本件事案は、社員旅行の費用が多額であり、社会通念上認められる旅行に該当
するかどうかが争われた事案です。
今回の事案と争点は異なりますが、本件において裁判所が判示した内容
より一部抜粋いたします。
ロ 経済的利益の少額不追求について
「本件基本通達……の取扱いは、……レクリエーション行事が社会通念上一般に行われていると認められるようなものであれば、あえてこれに課税するのは国民感情からしても妥当ではないこと等を考慮したものと解され」
その「判断に当たっては、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者及び参加従業員の負担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきである」
上記「趣旨からすれば、従業員の参加割合、参加従業員の費用負担額ないし両者の負担割合よりも、参加従業員の受ける経済的利益、すなわちレクリエーション行事における使用者の負担額が重視されるべきである。……従業員の参加割合、参加従業員の負担額、使用者と参加従業員の負担割合は、当該旅行がレクリエーション行事といえるかどうかの判断について考慮すべき事項であるとはいえても、自ら、どの程度の費用を負担してレクリエーション行事に参加するか否かは最終的には従業員が決定すべき事柄であって、参加しない者も予定されるからである(昭和63年3月31日大阪高裁判決)。」
これらの内容から、特にこのコロナ禍において
従業員の皆さんの状況を考慮した、A~Cのプランは社会通念上
逸脱したものとは言い難く、少額不追及の範囲に該当し
従業員のみなさんに所得税の課税は生じないものと考えます。
これをふまえて、ニューノーマルで皆さんで楽しめる
社内レクリエーションを企画してみてはいかがでしょうか!
※なお、実際の処理についてはお会社の税理士の先生と
ご相談のうえご判断ください。