会社が支出した交際費について、会社の費用なのに税務申告の際、なぜ全額が費用(損金)として認められないのかと感じておられる方も、少なからずいらっしゃると思います。
現行の「交際費課税」は、戦後における企業の資本蓄積等を目的として昭和29(1954)年に制度が設けられて以来、課税対象の見直し等が行われながら60年以上継続して適用されています。
国税庁が発表した資料によると、平成28年4月から平成29年3月までの間に終了した事業年度において企業が支出した交際費等の額は3兆6,270億円にものぼり、そのうち税法上、損金に算入されなかった金額は9,578億円あります。
平成24年度以降、交際費の支出額は年々増加しており、現在でも大きな課税対象になっています。交際費課税に関する正しい認識が不足していたために、税務調査で多額の交際費の課税漏れについて指摘を受けることがないように、十分に注意する必要があります。

1. 交際費の定義
 税法上、交際費等とは、①交際費、接待費、機密費その他の費用で、②法人の得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する、③接待、供応、慰安その他これらに類する行為のために支出するもの、とされています。飲食費や贈答費以外の費用も、広く交際費等と取り扱われています。
これらの支出については、自社が直接支出するものだけでなく、他社との共催によるもの等も含みます。また、交際費の支出先の事業に関係のある者には、自社の役員、従業員、株主等も含むとされています。

2. 交際費・接待贈答費をめぐるよくある質問
 ここからは、交際費・接待贈答費に関する問題について、Q&A形式で確認していきましょう。

Q1. 交際費のうち、いくらまでなら会社の費用として認められるのですか。

A1. 原則として、法人が支出する交際費の額のうち接待飲食費の額の50%を超える部分の金額は、所得の計算上、会社の費用(損金)とは認められません。
ただし、資本金1億円以下の中小企業のうち一定の企業については、支出した交際費のうち、次の計算式による定額控除の額までを損金とすることも選択できます。

定額控除の額=800万円×事業年度の月数÷12

Q2. 接待飲食費とは、どのようなものが該当するのでしょうか。

A2. 接待飲食費とは、交際費のうち社外の者に対する飲食や飲食に類する費用であって、帳簿書類に次の事項が記載されたものをいいます。

1.飲食等のあった年月日
2.飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者の氏名または名称とその関係
3.飲食費用の金額ならびに飲食店等の名称と所在地
4.その他飲食であることを明らかにするために必要な事項

Q3. 接待飲食費のうち、1人当たりの金額が5,000円以下の場合は交際費に含めないということですが、何か条件があるのでしょうか。

A3. 前問のA2で説明した接待飲食費のうち、「飲食等のために要する費用÷飲食等に参加した人数」が5,000円以下の場合は、「A2の1〜4」に加えて、「飲食等に参加した者の数」を帳簿書類に記載・保存することにより、交際費から除いて支出事業年度の損金とすることができます。

Q4. 災害により近隣に避難所ができたため当社の取扱食品を救援物資として避難所に無償提供しました。また、得意先が被災したため災害見舞金を贈呈しました。これらの支出は、交際費に該当するのでしょうか。

A4. 災害による被害を受けた不特定多数の者を救援するために行う自社取扱商品の提供に要する費用は、寄附金や交際費には該当しないもの(広告宣伝費に準ずるもの)として損金に算入されます。
また、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程において支出する見舞金も、取引の状況を勘案した相応の額であれば交際費には該当しません。

Q5. 国外における事業の受注に際し、有利な取り扱いを受けることを目的として、外国公務員に謝礼金を支払いました。この支出は、交際費に含めて損金不算入の計算を行う必要があるのでしょうか。

A5. 国際的な商取引に際し、外国公務員等に対して金銭その他の利益の供与を行った場合の費用は、不正 競争防止法に反するものであり損金算入できないこととされています。このため交際費の損金不算入額の計算対象に含めるのではなく、その支出額の全額を損金不算入とする必要があります。

Q6. 税務調査において、交際費についてはどのような観点から検討が行われるのでしょうか。

A6. 調査官は、課税対象となる交際費の支出が法令どおり正しく計算されているかを確認します。具体的には、次のような点がチェックポイントになるでしょう。

1.不正手段により捻出した資金が交際費に流用されていないか
2.交際費が福利厚生費や会議費等、交際費隣接科目で支出されていないか
3.個人的費用が交際費に混在していないか

 交際費については、税務調査のためだけでなく、会社の内部けん制のためにも稟議書等を整備し、法人業務との関連性を記録しておくことをお勧めします 。

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