御堂筋税理士法人松本です。

法人税の実効税率(32.11%)については、
2017年度をメドに20%台までの引き下げを政府は目指していましたが、
それを1年前倒しする方向で検討に入ったとのニュースがありました。

前倒しの実効税率の引き下げにより
法人が所得を繰り延べることによる
節税メリットがさらに大きくなりますね。

さて、所得を圧縮するために法人が計上できる
インパクトのある費用の一つに役員退職金があります。

中小企業の自社株の株価引き下げを考える際にも
検討される役員退職金ですが、
その支給については、税務上問題とならないためのポイントがあります。

役員退職金についてまとめる機会がありましたので
以下ご参考にして頂ければと思います。

■■■役員退職金の算定方法と留意点

役員退職金については、法人税法上、原則損金算入が認められています。
しかし、その支給金額が、高額になることが多いため、
利益調整の観点から、その支給金額、支給時期等については、税法上詳細な規定が存在します。

(1)役員退職金支給についての決定
会社法上、役員退職金の支給については、役員報酬と同様、株主総会の決議が必要となります。株主総会においての決議後、具体的な支給金額・支給時期等については、取締役会に一任されるのが一般的かと思われます。また、役員退職金規程が整備されている場合には、その規程に基づくことになります。

(2)役員退職金の適正額の算定方法
法人税法上、役員退職金については、『不相当に高額の退職給与を支給している場合には、その高額部分の金額は、損金算入されない』というように一定の制限がなされています。役員に対する退職金がこの『不相当に高額なもの』に該当するか否かについては、具体的には、その役員の業務従事期間、退職の理由、同業種類似法人(比較法人)の役員退職金の支給状況からみて相当と認められる金額を超えるかどうかにより判定します。

役員退職金の適正額の具体的判定基準としては、次の方法が用いられます。
このうち、一般的には平均功績倍率法が利用されています。

【平均功績倍率法】
比較法人の平均功績倍率に当該役員の最終報酬月額及び勤続年数を乗じて計算する方法

(退職時の最終報酬月額)×(在職年数)×(比較法人の平均功績倍率)

【最高値功績倍率法】
比較法人の支給事例の最高値の功績倍率に
当該役員の最終報酬月額及び勤続年数を乗じて計算する方法

(退職時の最終報酬月額)×(在職年数)×(比較法人の最高功績倍率)

【1年当たり平均額法】
比較法人における退職役員の退職給与の額を
その勤続年数で除した金額の平均額に当該役員の勤続年数を乗じて計算する方法

(比較法人の1年当たりの退職金平均額)×(在職年数)

【平均功績倍率法】による場合、在職年数については、
役員就任時から退職までの通算在籍年数であり問題になることは少ないですが、
功績倍率の妥当性の範囲については、
税務上、見解が分かれる可能性があり、判例等をふまえて判断することになります。

功績倍率については、
法人税法上定められた倍率があるということではなく、
類似法人の役員退職金の支給状況と比較をする場合、
その類似法人の支給額がどのような功績倍率になっているかを計算し、
その倍率と比較するということになります。
一般的には、取締役で2倍、代表取締役で3倍の範囲であれば、適正額であると考えられます。

功績倍率が、それ以上になる場合においても
一概に『不相当に高額なもの』に該当するということとではなく、
算定根拠となる事実をふまえて検討していくことになります。

また、退職時の最終報酬月額については、
原則退職時の直近の月額報酬と考えられますので、
役員退職金の支給に備えて、
役員報酬の改定を検討しておく必要があるケースがあります。

【1年当たり平均額法】については、
最終報酬月額が当該役員の会社に対する功績を最も反映しているとはいえない場合には、
合理的な算定方法となります。

功績倍率による役員退職金の算出方法については、
退職時の役職により算出する方法ですが、
より明確に会社への貢献度により役員退職金を算定する場合には、
役位別の最終報酬月額をもとに計算する方法があります。

<役位別功績倍率による算定方法>
下記①~④の合計額 ※役位別功績倍率については、参考例。
①(代表取締役最終月額報酬)×(代表取締役在籍年数)×3(代表取締役功績倍率)
②(専務取締役最終月額報酬)×(専務取締役在籍年数)×2.5(専務取締役功績倍率)
③(常務取締役最終月額報酬)×(常務取締役在籍年数)×2(常務取締役功績倍率)
④(取締役最終月額報酬)×(締役在籍年数)×1.5(取締役功績倍率)

(3)留意点
最後に、役員退職金の算定に関しての税務上の注意点をまとめておきます。
① 株主総会、取締役会等の議事録を必ず具備しておく
② 功績倍率法を利用するなど役員退職金の算定根拠を明確にしておく
③ 役員退職金規程については、整備しておくことが望ましい
④ 役員退職金支給予定額に基づき最終役員報酬月額を検証しておく
⑤ 功績倍率が類似法人に比し高くなる場合には、算定根拠資料を整備しておく


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